東京大学 藤原研究室,研究室概要
当研究室の代表的な論文について要旨と合わせて掲載しています。
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(1) 大規模系における量子力学的第一原理分子動力学計算の開発
■ Two-stage formation model and helicity of gold nanowires
  Y. Iguchi, T. Hoshi, and T. Fujiwara, Phys. Rev. Lett. 99, 125507, 4 (2007)
ヘリカル(らせん型)金ナノワイヤについて、その形成プロセスモデルを提案し、量子力学的分子動力学計算によって確認した。本モデルは実験で得られている種 々のヘリカル構造における「マジックナンバー」を説明する。また、形成過程メカニズムについて、特に表面上に広がったd電子が本質的であることを見いだし た。更に、プラチナ、銀、銅など他元素でのヘリカルナノワイヤ構造出現可能性について論じた。

■ Linear algebraic calculation of the Green's function for large-scale electronic structure theory
  R. Takayama, T. Hoshi, T. Sogabe, S.-L. Zhang, and T. Fujiwara, Phys. Rev. B 73, 165108, 9 (2006)
大 規模電子構造計算を目的として、新しい汎用線形計算アルゴリズム「シフト型複素共役式共役勾配法(shifted COCG)」を導入した。本手法は、固有状態を計算することなく、グリーン関数の計算を可能にする。数理的問題は、多数のエネルギー点における線形方程式 系に帰着され、実質的計算は1つのエネルギー点だけ行うことで、全てのエネルギー点に対する数値解を得ることができる。本手法を、半導体物質系と金属物質 系の双方に適用した。

■ Nanoscale structures formed in silicon cleavage studied with large-scale electronic structure calculations:
  Surface reconstruction, steps, and bending

  T. Hoshi, Y. Iguchi, and T. Fujiwara, Phys. Rev. B72, 075323 (2005)
新 しく開発された大規模電子構造計算手法により、1100万原子系までのテスト計算が達成され、応用として、10ナノメートル系でのシリコンへき開プロセス 計算を行った。実験で知られているSi(111)-2x1(パンディー型)構造の形成プロセスが再現された。さらに、理論予測として、新しいステップ構造 が得られた。最後に、10ナノメートル系の非平衡プロセスの視点から、へき開以外の現象との共通性質を論じた。

(2) 強相関電子系に対する第一原理電子構造理論の開発
■ Electronic structure of antiferromagnetic LaMnO3 and the effects of charge polarization
  Y. Nohara, A. Yamasaki, S. Kobayashi, T. Fujiwara, Phys. Rev. B 74, 064417 (2006)
GW近似を用いて、ペロブスカイト型遷移金属酸化物LaMnO3の解析を行った。その結果、バンドギャップは実験結果とよく一致した値(1.0eV)を得た。また、Mnのt2g軌道のバンド幅がeg軌道のそれより大きく収縮しており、このことはt2g軌道よりeg軌 道の方がより強い遮蔽効果が効いていることを示唆している。また、正孔の寿命が電子の寿命に比べて短いことも見い出した。更に、サイト内の動的に遮蔽され たクーロン相互作用Wを計算した結果、低エネルギー領域で強く遮蔽効果が効いていることが分かった。これらは、Mnのeg軌道の電子が動きやすさに起因している。

■ Electronic structure of ferromagnetic bcc-Fe, fcc-Ni and antiferromagnetic NiO in the LDA+DMFT method
  O. Miura and T. Fujiwara, Phy. Rev. B 77, 195124 (2008)
逐次摂動近似法(IPT)を用いて、広範な強相関電子系物質に適用可能なLDA+DMFT法を提案した。本LDA+DMFT法の特色として、LDA ハミルトニアンの直接利用、IPTの1不純物問題解法への利用、配位子場理論の利用によるバンド描像と原子系の多電子描像と融合が挙げられる。更に本LDA+DMFT法を強磁性Fe, Ni及び、反強磁性NiOに適用した。Fe, Niでは、占有状態のdバンド幅の収縮、Ni6eVサテライトが見られた。またNiOでは、Niサイト内d電子間クーロン相互作用によるNi-dバンドとO-2pバンドの混成の変化により、バンドギャップ4.3eV、電荷移動型電子構造が得られた。以上はXPSの実験結果と良く一致している。これにより、本LDA+MDFTが金属及び絶縁体をはじめ、NIOのようなs,p軌道とd軌道とが複雑に混成した系についても適用可能である事が示された。

■ Charge and spin stripe in La2-xSrxNiO4 (x=1/3,1/2)
  S. Yamamoto, T. Fujiwara and Y. Hatsugai, Phys. Rev. B 76, 165114 (2007)
層状ペロブスカイト酸化物 La2-xSrxNiO4 は、 低温で電荷及びスピン分布が自律的に縞模様になる特異性を持つ。この性質は、ホール密度の低いx=1/3では第一原理電子構造計算から理解できることを示 した。また、ホール濃度が高いx=1/2に対しておける電荷秩序は、長距離クーロン相互作用による相関効果によって安定化されることを、縮退軌道系に対す る厳密対角化法を用いて示した。同時に、スピン秩序は、電荷秩序・軌道縮退・異方性によって安定化される事を示した。